甲殻類263263ノスジエビは、2019年に新種記載された種で県内にも生息することが明らかとなった。現在のところ本種の生息地は県東部の一河川のみで生息数も減少傾向である。カワスナガニは、2013年に日本海側地域において初めて確認された全国的に希少なカニ類で、県内の生息地は少ない上に生息範囲が狭く生息数も不安定な状況である。アリアケモドキは、2014年に県内で初めて確認された汽水性のカニ類で、県内での生息地は県東部に限られている。 前回掲載されたミナミテナガエビ,トゲナシヌマエビ,タイワンヒライソモドキの3種は、県内での生息情報が増えており生息数も安定していることから、リスト外とした。特にミナミテナガエビは県内全域の日本海側の流入河川で優占種となっている。近年、これら3種と準絶滅危惧に選定したヒラテテナガエビ、ヤマトヌマエビ、ヒメヌマエビは、日本海側地域での分布が北上傾向で、水温上昇による影響も示唆されているため、今後も県内での動向に注視したい。 汽水域から淡水域に生息する身近な甲殻類については、人間の生活に密着していることも多く、その生息環境は人間活動の影響を強く受けやすい。現在は、洪水対策など防災面での河川改修も増えており、生息環境の改変に対する配慮も重要である。また、シナヌマエビやチュウゴクスジエビといった外来種の定着も確認されており、地域固有の種を守るためには在来種の正確な生息情報が必要不可欠である。県内での情報は蓄積されつつあるが、県中西部や隠岐諸島では未だ不十分な地域がある。よって、今後も県内全域での普及啓発と継続した情報収集を行い、保護を要する種については専門家の指導にそった適切な対策をとることが必要である。動物編に掲載されたニホンハマワラジムシとニッポンヒイロワラジムシについては、近似する別種と混同した記録に基づいて判定されていたことが判明した。そのため、今回、改めて判定を行った。ニシカワハヤシワラジムシ、シロコシビロダンゴムシについては追加の情報が無い状況である。水生種については、シンジコスナウミナナフシがムロミスナウミナナフシと同種である可能性が指摘されている(堀越,2012)ものの、分類学的な処置はなされていない。陸生・水生いずれの種も環境の変化によって絶滅の危機に瀕している種も存在するはずであるが、調査研究の不足によって評価が難しい状況が続いている。等脚目について 等脚目はダンゴムシやワラジムシといった身近な陸生種のほか、フナムシやミズムシ、コツブムシなど水生(海棲を含む)・半水生種を含む。今回の改定では、掲載種がすべて情報不足となった。いずれも2014動物編の掲載種である。等脚目の島根県全体の状況を把握できる情報が少ないが、陸生等脚目については唐沢・川野(2014)によって整理されている。これによると、2014 一般的に甲殻類と呼ばれている節足動物門甲殻綱(または甲殻上綱)に属する生物種は非常に多岐にわたっており、分類群や種も多く、島根県内における甲殻類の全体像については未解明の部分が多い。その中でも十脚目といわれるエビ・カニ・ヤドカリの仲間については、近年の情報が蓄積されつつある分類群である。このような現状の中で、今回のしまねレッドデータブック掲載種の改訂にあたっては、前回2014動物編に掲載された十脚目と等脚目の2つの分類群に限定して検討を行った。近年の遺伝子分析調査により類似種である外来のシナヌマエビが県内全域に広く定着しており、本種の生息地は限られていることが明らかとなった。また、県内には4系統が確認されており、過去の分布域外でも確認されていることから、他地域からの集団も移入していた可能性がある。このため,外来系統の侵入による生息場所の競合や交雑による遺伝子撹乱のリスクが大きくなっていることから,前回の準絶滅危惧から絶滅危惧Ⅱ類へランクを上げることとした。ヒラテテナガエビ、ヤマトヌマエビ、ヒメヌマエビは、県内全域で新産地が確認されるなど生息情報が増えてはいるが、河川改修や堰堤の建設などによる生息条件の悪化が懸念されるため、準絶滅危惧から変更はしなかった。また、ベンケイガニ、マメコブシガニは、近年の生息情報が少ないものの前回と生息状況は変化がないため、準絶滅危惧から変更はしなかった。フタバカクガニは、県東部と隠岐諸島で確認されているが、評価にいたる新たな生息情報が得られなかったため、情報不足から変更はしなかった。 今回、新たに選定した種は3種で、キタノスジエビとカワスナガニを絶滅危惧Ⅱ類、アリアケモドキを準絶滅危惧とした。キタ十脚目について 島根県における十脚目ついては、近年、県東部を中心に潮間帯や沿岸域、汽水域およびその周辺陸上域、淡水域に生息する種類について、分布や生息確認などの報告がある。エビ類については、河川や湖沼に生息する淡水性・汽水性の小型エビ類の情報が主である。県内の分布や生息状況については、淡水エビ類の研究者でもある元島根大学教授の故上田常一博士(1903〜1981年)の報告や標本があり、1940〜1960年代の記録が残されている。その後しばらくは正確な記録がほとんどない状況であったが、2008年頃から県東部を中心に調査が進み、近年の分布と生息状況が少しずつ解明されている。カニ類およびヤドカリ類については、2010年代から汽水域や沿岸域で県内初記録の種も増えるなど、新たな知見が蓄積され、基礎的資料も整理されている。 これら十脚目のうち、前回の掲載種と新たに報告された淡水・汽水性のエビ・カニ類を選定した。ヤドカリ類については、中海などの汽水域に生息する種もいるが、海産種が中心なため対象外とした。カテゴリーの評価にあたっては、生息状況が地域によって情報の偏りがあるため、県内全域において可能な限り現地調査や聞き取り調査を実施し、現状を把握することに努めた。 ハマガニは、新産地が県西部で確認されたものの生息数はわずかである。また、県東部の一部や隠岐諸島での既産地においては、近年の生息情報が途絶えており、絶滅のおそれが高い状況にあるため、絶滅危惧Ⅰ類から変更はしなかった。ミナミヌマエビは、(□井要介・桑原友春)(林 成多)概説 甲殻類
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