菌類637637ショウロおよびヌメリアイタケの3種を準絶滅危惧(NT)に選定した。さらに、本改定版ではこのカテゴリーへ、同じくマツ林に分布するシモコシ、マツバハリタケを追加した。なお、ヌメリアイタケは2004年に確認して以来、その後は子実体が観察されないため、本改定版では情報不足(DD)へ移動させた。 2023年には、島根県内で亜熱帯性の発光菌であるヤコウタケに類似するきのこが採集された。温暖化によるヤコウタケの生息域拡大も視野に入れて調査された結果、採集されたきのこは形態的に既知種との相違点があり、分子生物学的な情報を併せた判断により、ヤコウタケとは別種とされた。本種は青森県と鳥取県でも確認され、それぞれの採集地に共通した環境は湿度が保たれる広葉樹林であること、積雪がみられることであった。このため、日本菌学会大会において、和名にユキグニヤコウタケ(仮称)が提案された。本種の分布は矮小で、点在していることから、生息地にはいくつかの生育条件が適切に備わっていると考えられる。本県の豊かな自然を維持するための指標生物として、本改定版では本種を準絶滅危惧(NT)に選定した。参考文献宮崎惠子・工藤伸一・牛島秀爾・土屋 慧・小野寺杏仁・白石泰志・冨川康之・長澤栄史(2024)日本の冷涼な地域で発見されたヤコウタケ様の発光菌について.日本菌学会第68回大会講演要旨集:63.宮崎惠子・冨川康之(2025)島根県で採集されたきのこ(Ⅸ)−2021〜2024年の新規同定種−.島根県中山間地域研究センター研究報告,21:35-42.冨川康之(2006)子実体懸濁液散布によるクロマツ苗畑でのショウロ栽培.島根県中山間地域研究センター研究報告,2:43-49. 菌類とは、一般にかび、きのこ、酵母などと呼ばれている生物群の総称である。肉眼では見ることのできない微細なものが多く、採集や種を特定することは容易でない。このため、これまでに確認された菌類はおよそ10万種とされているが、これらは現存する菌類の数%に過ぎないと推定され、未知種があまりにも多い。私たちの目につきやすい菌類は、担子菌門や一部の子のう菌門のうち肉眼で観察できる大きさの生殖器官、すなわち子実体を形成するきのこ類である。きのこ類の本体は菌糸であるが、菌糸が直接観察されることは少なく、通常は子実体の観察によって同定され、生息実態が推測される。これは、調査手法としては間接的であり、サンプリングは断片的である。このような調査条件下でより正確な生息実態を知るためには、長期に及ぶ観察記録の蓄積が重要である。 近年では分子生物学的な手法による同定が行われるようになり、子実体観察に頼っていた同定に客観的な裏付けが与えられるようになった。これらの結果が整理され、少しずつではあるがきのこ類の分布に関する情報が集積されている。このため、菌類における絶滅危惧種の選定は、前刊の「改訂しまねレッドデータブック2013植物編」と同じく、対象をきのこ類に限定した。 きのこ類を養分の摂り方の違いで区分すると、一つのグループは種々の樹木と共生して、養分の受け渡しをしている菌根性きのこである。もう一つのグループは、森林内の倒木や落葉などの有機物を分解して養分とする腐生性きのこで、各樹種へ特異的に生息する種類もみられる。島根県では、コナラにアカマツが混交する雑木林(二次林)、中国山地の標高約700m以上に分布するブナ林とミズナラ林、低地に分布するシイ・カシを主体とした照葉樹林、海岸沿いの防風クロマツ林など、さまざまな森林が成林しており、森林の種類ごとにきのこ類の分布を確かめる必要がある。 絶滅危惧種の選定は各種の分布調査に基づいて行われるべきであるが、当初の「しまねレッドデータブック2004」では2000年に環境庁が選定した絶滅危惧種のうち、本県において分布が確認された種を中心に7種を選定した。これらはいずれもブナ林に生息し、温暖化によってブナ林が減少すれば生息が危ぶまれると考えられた。このうち、絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)としたクチキトサカタケ、ムカシオオミダレタケ、ツヤナシマンネンタケ、エビタケ、タマチョレイタケは県内での分布密度がきわめて低い種であり、本改定版においても同じカテゴリーとした。前刊(2013)まで絶滅危惧Ⅱ類(VU)としていたウスキブナノミタケとツキヨタケは、その後の調査でブナ林内に優先的に生息していることが確かめられ、本改定版では準絶滅危惧(NT)へ移動させた。 マツ林では、燃料革命後に落葉や落枝が焚きつけとして利用されなくなり、これにともなう土壌の富栄養化や草地化はきのこ類の分布に影響を及ぼし、一部の種は生息域の矮小化が心配されるようになった。また、松くい虫被害によるマツ林の減少は、本県の森林環境を激変させた。貧栄養土壌のマツ林に生息していたマツタケは環境変化の影響を大きく受け、1975年には県内30市町村(合併前)でみられた発生が、1990年には6町(合併前)に減少し、現在ではマツタケ産地と呼べる地域は皆無となった。 前刊(2013)では、これ以上にマツ林土壌が成熟し、またマツ林減少が進むことによって絶滅が危惧されるホンショウロ、(冨川康之)概説 菌類
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