しまねレッドデータブック2026
75/740

両生類・爬虫類6565はじめに 本稿に係る分類群を構成する両生類と爬虫類は、まったく異質の動物群である。両生類は繁殖を水環境に頼り、水と切り離せない動物であるのに対し、爬虫類は胚の発生に必要な水環境を卵の中に保持する羊膜を獲得し、繁殖も含め、乾燥した環境での生活にほぼ完全に適応している。こうした顕著な違いがあるにもかかわらず、両生類と爬虫類が一緒に扱われる大きな理由は、分類学の創始者リンネ(von Linné,C.)が両生類と爬虫類を、ともに両生類・爬虫類とは何か 両生類はデボン紀の終わりに、硬骨魚類中の肉鰭類から派生し、初めて陸に上がった動物群である。現生かつ国内産の両生類は、尾と四肢を留めた有尾(サンショウウオ)目と尾のない無尾(カエル)目との2群から成る。これらの2群は体表に鱗がなくて皮膚はつねに裸出し、その代わりに皮膚を湿らせておくための腺が多数ある。卵生で、卵は通常水中に生みつけられるが、地上に産むものでも卵に石灰質の殻がない。胚には羊膜がなく、尿膜もそなえていない。幼生(オタマジャクシ)は一般に水中で生活し,鰓で呼吸するが、成長する途中で変態して鰓を失い、肺と皮膚とで呼吸するようになるのを原則とする。しかし、ハコネサンショウウオ属は変態後、皮膚呼吸だけを行う。 爬虫類は石炭紀後期の間に初めて現れた。羊膜は、爬虫類から進化した鳥類にも哺乳類にも共通してみられる。そもそも爬虫類とは、均質な群ではないため、一律に定義し難いが、羊膜をもつ脊椎動物から、鳥類と哺乳類を除いた群集といえる。現生かつ国内産の爬虫類は、カメ目と有隣目の2群に大別されるが、有隣目はトカゲ亜目とヘビ亜目を含む。体の表面は鱗となった角質層に覆われるのがふつうで、羽毛や体毛をもたない。肺呼吸のみを行うのがふつうである。ただし、越冬中の淡水生カメ類などでは皮膚呼吸の割合は比較的高く、喉や総排出腔内の粘膜を通した特殊な呼吸も行う。繁殖様式は卵生、胎生のいずれかで、卵は卵殻をもつのがふつうである。島根県の両生類相および爬虫類相ならびに絶滅のおそれがある種のリスト まず、この間における文献・標本・現地調査の結果から、島根県内に生息する両生類は、8科29種が確認された(表1「島根県両生類目録」参照)。内訳は、有尾目3科15種、無尾目5科14種である。在来種に限ってみると、前者は3科15種(外来種なし)、後者は5科13種(外来種はウシガエルのみ)の、合わせて8科28種となる。一方、島根県に生息する爬虫類は、10科16種が確認された(表2「島根県爬虫類目録」参照)。内訳は、カメ目4科5種、有隣目6科11種である。こちらも在来種に限ってみると、前者は3科3種(外来種はクサガメおよびミシシッピアカミミガメ)、後者は6科11種(外来種なし)の、合わせて9科14種になるとみられる(狭義の日本列島におけるクサガメ集団の外来種説を支持した場合)。なお、目録に収録した種の分類学的配下等脊椎動物ないし外温性の四足動物ということで一括して扱った伝統が未だに続いていることにある。列、和名および学名は、日本爬虫両棲類学会(2025)、およびSugawara et al(2023)を参考にした。 ここで注目すべきは有尾目の種数(15種)である。うち13種がサンショウウオ科で、ともに全都道府県で最多を誇ることは特筆に値する。 そして、本分類群における選定対象範囲の検討を行い、海生ではあるものの生活史の一部を海岸(砂浜)に依存し、かつ県内に上陸して産卵する種(該当種はアカウミガメのみ)を対象要件に加えた。 さらに、今度の改訂に係る本分類群の掲載種について検討した結果、両生類から20種、爬虫類から6種が選定および評価された(別頁「両生類・爬虫類掲載種一覧」参照)。 掲載種に係る選定および評価の理由は種ごとの解説に記載のとおりだが、準絶滅危惧(NT)から情報不足(DD)に変更となった2種(タカチホヘビ・シロマダラ)については、あくまでも絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性を有していることに留意されたい。また、今回の改訂により選定対象外となった3種(カスミサンショウウオ・タゴガエル・ジムグリ)について、その理由を記すと次のとおりである。・ カスミサンショウウオは、この間における分類学的再編により、基準標本産地を有する九州地方に固有の種となったことから除外した。・ タゴガエルおよびジムグリは、どのカテゴリー要件にも該当しない、との判断に至って除外した。この2種は、その生態上、ともに人目につきにくく、それゆえ珍しいと思われる側面があるかもしれない。しかしながら、タゴガエルは県内の奥山および里地里山の、谷筋という谷筋にふつうにみられる(鳴き声が聞かれる)し、ジムグリも県内の奥山および里地里山でしばしば目撃されている。ジムグリがもっぱら好んで食べる地中性小型哺乳類(モグラ類やネズミ類)の、全体数の減少を示唆する客観的資料が見当たらないことも、根拠となった。 これを前回改訂時の掲載種数と比較すると、絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)は1種、絶滅危惧Ⅱ類(VU)は3種、準絶滅危惧(NT)は3種、情報不足(DD)は4種、それぞれ増えている。【参考文献】疋田努(2012)爬虫類の進化.248pp.東京大学出版会,東京.松井正文(2005)これからの両棲類学.316pp.裳華房,東京.松井正文(2017)これからの爬虫類学.288pp.裳華房,東京.日本爬虫両棲類学会 (2025) 日本産爬虫両生類標準和名リスおわりに 以上、本稿では両生類と爬虫類の全体にわたって、そのあらましを説明した。以後につづく選定種ごとの解説では、生態や存続を脅かす原因についてなるべく具体的な説明に努めた。ぜひとも読んでいただき、両生類と爬虫類が人間の暮らしに身近な存在であることを再認識していただければと思う。 そして、ともに生きる幸せを未来へつなげるべく、行動を起こされるきっかけにしていただければ幸いである。(岩田 貴之)概説 両生類・爬虫類

元のページ  ../index.html#75

このブックを見る