汽水・淡水魚類 81813. 新しい試みについて (絶滅のおそれのある地域個体群の提唱) 現在、しまねレッドデータブックのカテゴリーとしては掲載されていないが、その希少性の観点から次回の改訂時における新規カテゴリー創設への提言として、絶滅のおそれのある地域個体群(LP)を取り上げる。環境省の定めるレッドリストにおける基本概念では、「地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの」とされている。 今回取り上げた種は、全国的には普通種でありながら、正にこうした条件に合致するものであり、その危急性等を含めてなんらかの対策が求められると考える。また、他の分類群に対しても、同様な孤立した地域個体群があるのであれば、次回の改訂時には正式にカテゴリーに含めてもらえることを願い、概説内で取り上げることとした。なお、今回取り上げる1種を加えると、汽水・淡水魚類は33種類となる。すると、これまで身近なところで普通に親しまれてきた魚たちが、徐々に身近な存在でなくなりつつあることを示している。 そのことは、多くの水辺で魚類の減少が予想以上に進んでいる状況を、今一度再認識していく必要性を強く感じるところである。 また今回の改訂が示すものとして、種の減少に対する危機意識にとどまらず、逆に少ないながらも今でも残る豊かな自然、つまり「いろいろな魚が泳ぎまわっている水辺」を再発見して、魚だけでなくその生息環境をも見守っていこうとする姿勢も同様に求められてくるものと思われる。種名(和名):男池・女池(隠岐の島町)のチチブ陸封化個体群種名(学名):Tridentiger obscurus (Temminck and Schlegel,1845)目名・科名:スズキ目ハゼ科カテゴリー区分:絶滅のおそれのある地域個体群(LP)【選定理由】 チチブの陸封化個体群は全国的にみても数か所しか知られておらず、希少な個体群である。今後生じるであろう遺伝的・形態的・生態的な変化を含めた種分化方向を知る対象としても、学術的に貴重な存在である。【概要】 チチブは、本州・四国・九州・朝鮮半島・沿海地方に分布するハゼの1種で、隠岐諸島など日本周辺の離島でもみられる。川と海を往来する両側回遊魚で成魚は全長8cm、他のハゼ類と比較して太く短い体形をしている。内湾や河口の汽水域に生息するが、淡水域にもみられることがある。一般的に、純淡水域を好むヌマチチブと本種は棲み分けしている。ふ化した仔魚は一旦海に下り再び遡上するが、まれに陸封された個体群がみられることがある。産卵は春季から夏季で、転石の下などにオスが産卵室を作り、産卵後もオスはふ化まで卵を守る。雑食性で、底生動物や藻類なども摂餌する。寿命は概ね1年とされている。【県内での生息地域・生育環境】 隠岐郡隠岐の島町の西郷湾南金峰山に連なる半島の外洋側にあ1.自然環境について 本県におけるRDBの対象水域は「淡水」と{汽水}である。 「淡水」としては、大小の河川及び用水路・溝川などの流水性のものと、淡水池・溜池・堤のような止水性のものがある。 河川には、一級河川の江の川・斐伊川・高津川を筆頭に多数の中小河川が、中国山地から日本海に向かって流れている。更に、隠岐諸島や島根半島などの海岸部には、背後の山から、海に向かう多くの流程の短い川がある。 また、高津川や江の川など県西部の河川では、太平洋側の河川に特徴的な淡水魚が生息している。それは、地殻変動によって、瀬戸内海側に流れていた川の一部が日本海側に流路を変更(河川争奪)したことによるものとされている。 「汽水」は、淡水と海水が入り混じる場所に存在し、多くは河川の下流域に形成される。一級河川など水量の多い大型の河川では、下流が平野部を流れることによって、遡上する海水と混じり易いことから汽水が長く形成される。また、中小河川にあっても、海に流入する際には、それぞれの地形に合わせた汽水が形成される。 本県の場合、汽水を代表する宍道湖・中海は一級河川斐伊川の最下流部に位置し、それぞれの湖は安定した塩分を保っている。因みに、斐伊川が流入する宍道湖は海水のおよそ10分の1、日本海と接する中海はおよそ2分の1程度の塩分である。しかし、近年は、海水温の上昇によって、塩分が高くなる傾向にあるとされる。また、神西湖及び日本海に流れる差海川なども比較的安定した塩分を保っている。2.RDBの掲載について 今回の改訂作業によって、かなりのカテゴリーの変動があった。まず、レッドリストの数量の増加があり、前回(20014年)にリストアップされた24種の中でリストから外れた種が1種と、新規に9種が加えられたことで32種に増加した。 次に変更の内容として、絶滅危惧ランクの上昇が2種であるのに対して、逆に下降した種は1種であった。その内容は、絶滅危惧Ⅰ類では、これまでの5種(ゴギ・ミナミアカヒレタビラ・オヤニラミ・イシドジョウ・二ホンイトヨ)に新規記載のワカサギをはじめ、Ⅱ類から2種(カワヤツメ・ルリヨシノボリ)がカテゴリーの上昇として加えられた。 逆に、絶滅危惧の度合いが下がったものは、Ⅰ類からⅡ類にランクを下げたクルメサヨリの1種にとどまっている。 準絶滅危惧では、今回新規として取り上げられた9種のうち5種(ニホンウナギ・ヤリタナゴ・モツゴ・カワヒガイ・セスジボラ)が加えられた。 情報不足では、新規に加えられた2種(ドジョウ、シラウオ)に加え、前回情報不足から掲載が見送られていたタモロコが再度加えられた。また、前回は情報不足として掲載していたカワアナゴは、生息域の拡大が認められるため、今回のリストからは外された。 以上、今回の改訂では、島根県における淡水と汽水域に生息する魚種の絶滅危惧の高まりがいっそう際立ってきたといえる。さらに、今回の改訂において新規として取り上げられた9種に注目(越川敏樹)概説 汽水・淡水魚類
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